Interview – Kuromiさん –

Kuromi先生を深堀りインタビュー!

2023年にレタグラフィー認定講師の資格を取得。その後も学びを深め、デジタルレタグラフィー認定講師、和心レタグラフィー認定講師の資格を次々と取得されました。

レタグラフィーコラボコンクールでは、これまでの受賞作品を徹底的に分析。文字の美しさを追求した作品、想いがあふれるストーリー性のある作品など、さまざまな方向性を模索されたといいます。その中でたどり着いたのは、「自分の表現にぴったり合う作品」を生み出すことでした。

プロフィール写真を公開しておらず、どこかベールに包まれた存在のKuromi先生。しかし、その作品から想像する姿と実際にお会いしたときのギャップもまた、多くの人を惹きつける大きな魅力です。


そんなKuromiさんとは、どんな人なのか。深堀りして聞いてみました

レタグラフィーコラボコンクール2025」レタグラフィー部門最優秀賞受賞

Interview

レタグラフィーと出会って、ポスターという新しい道が開けた

幼少期からずっと、「書くこと」「読むこと」「作ること」が好きだった

手芸は、幼少期からずっと好きでした。NHK出版が出している「すてきにハンドメイド」という月刊誌がありますが、その前身の「おしゃれ工房」が、小さい頃の愛読雑誌でしたね。

 今は、『手芸』よりも『ハンドメイド』という言葉をみなさん使われますが、私は自分がやっているのは『ハンドメイド』でなくて『手芸』かなと思ってて・・・『手芸』の方が、おばあちゃんっぽい感じがして好きなんですよね。おばあちゃん大好きっ子だったからかも。

 手芸のほかに、読書や学校の図書室が好きだったので、大学では図書館の勉強をしていました。でも就活中、ちょっとうっかり、手芸店を展開している会社を受けたら受かってしまったんです。最後、半導体の専門商社と迷いましたが、楽しい方がいいと思い、最終的に手芸店に入ることに決めました。

 卒業間近になり、最初の配属先発表で「博多」と言われて絶句しました。九州、行ったことない・・・現在地(茨城)からだいぶ遠い・・・一瞬、辞退することも頭をよぎりましたが、あと2日後には卒業旅行に出掛けてしまうし、今さら他の会社を探している時間もない。腹を括って、そのまま入社しました。

 大学四年間、図書館の勉強をみっちりしていましたが、結局、就職先候補から外しました。三年間、市立図書館でアルバイトをした結果、一箇所にじっとしていられるタイプではないことに気づいたんです。手芸店勤務時代は、出張も多いし、転勤も西へ東への大移動・・・慌しい日々でしたが、日本全国あちらこちらに行けて、たくさんの人と縁を繋いで・・・この経験のおかげで、リアル・オンラインを問わず、初めましての方との会話に困ることはありません。

手芸店で積み上げた、ものづくりの引き出し

手芸店に勤めて良かったことは・・・幅広いジャンルの手芸に触れることができたこと、資材や道具の知識が増えたこと、素晴らしい技術を持つ講師の先生方とお話しすることができたこと、ですね。

 在職中は、店長やエリアマネージャーとして仕事をしていましたが、手芸歴何十年レベルのスタッフさんや講師の先生たちの方が、知識量も多く、技術も圧倒的に上。だから、素直に甘えて「ここ教えてください」とお願いすることも多々ありました。みなさん丁寧に教えてくださって、本当にありがたかったです。

 インスタを始めた当初から「マトリョーシカ」をアイコンにしているのですが、実は、このマトリョーシカを作ってくれたのは、名古屋勤務のときにお世話になったトールペイントの講師さんなんです。私が捏ねた紙粘土の小さな小さなマトリョーシカ型に、繊細な模様を描いて息を吹き込んでくださいました。あれから二十年近くが経ちますが、紙粘土のマトリョーシカは、私の宝物BOXに大切に仕舞われています。

書道から学んだこと

小さい頃から、手芸と同じくらい字を書くことも好きでした。唯一の特技だったと思います。習い事はいくつかさせてもらっていましたが、最後に残ったのが書道教室で、大学受験の勉強が本格的に忙しくなるまで、十年ほど通いました。

 芸術的な書というより、お手本そっくりに書くことが好きだった気がします。普段のノートでもきれいな字を書くとほめられる。もっときれいに書きたくなる。ほめられる。この連鎖です。ザ・ほめられて伸びるタイプ。

 あの頃は、どれだけお手本通りに書けるか、どう手を動かしたらお手本の字になるのか、すごく考えて書いていました。この練習の意識は、今のレタグラフィーにも通じていますし、身につけておいて良かったと思う意識であり習慣です。

カリグラフィーへの憧れ そして、レタグラフィーへ

カリグラフィーへの興味は、子どもの頃からありました。書道の延長のようなところでカリグラフィー(ブラッシュライティング)に触れたり、翻訳の児童書の装丁にあしらわれたカリグラフィーのゴシック体にときめいたり・・・

 大学で図書館について学ぶ中に「西洋図書館史」という講義があり、写本が出てきたんです。ヨーロッパの文化や歴史に興味があったので、「写本の本物が見たい!」と強く思いました。

 だから、大学の卒業旅行では、一人でアイルランドのダブリンにあるトリニティカレッジまで行って、「世界で一番美しい写本のひとつ」と言われる『ケルズの書』を見てきました。本も素晴らしかったし、所蔵してある図書館もとても美しかったです。

 若干オタクチックではありましたが、私のカリグラフィーへの憧れは十分だったと思います。でも、日本でカリグラフィーが習える場所があるなんて、全然思ってもいなかったんです。習えるわけない、と決めつけてしまっていた。

 それが突然、インスタグラムでレタグラフィー協会を見つけて「習えるんだ?!」とすごく興奮したのを覚えています。しかも、文字を学ぶだけじゃなくて、オシャレに活かす方法も一緒に学べるなんて最高だと思いました。家に眠っている資材たちを使えそうなことも、受講を決めたポイントです。

 レタグラフィーを知って、すぐにインスタライブのお知らせが出て・・・子ども達を寝かしつけたあと、ワクワクしながら視聴しました。

 そうしたら、突然ゆか先生からDMが!

 なぜ突然DMをくださったのか、まったくわからない・・・投稿も5件くらいしかない、プロフィールも書いていない私になぜ・・・

 でも、メッセージのやり取りの中で、出身が同じ静岡県のN市だとわかり、オンラインで認定講師講座をお願いすることになったんです。

 この出会いは、運命だったと思っています。

レタグラフィーコラボコンクール2025受賞作品(画像をタップでより詳細をご覧いただけます)

積み重ねたもの

レタグラフィーを始めてから、季節に合わせて、インテリアフレームを作るようになりました。何が自分のインスピレーションの源泉か考えると、『これまでに出会った美しいものの記憶』かなと思います。

 読んだ本の装丁、描写。音楽の授業で聞いた交響曲。旅先で出会った景色。美術館に飾られた絵画。大聖堂で見たステンドグラス、回廊の装飾。幼稚園の送り迎え途中に見かけた花の色。映画に出てきたワンシーン。

 非日常でも日常でも、自分の中に積み重なってきた美しいものたち。レタグラフィーに限らず、何かを作るときは、その中から、今一番、自分が表現したいものに近いもののエッセンスを抽出しているように思います。

 今回、コラボコンクールで賞をいただいた『陰翳礼讃』は、クリスマスツリー型にクリスマスを祝う言葉を並べたインテリアフレームです。いつもカラフルな作品を作ることが多いのですが、私にしては珍しく、黒と白の非常にシンプルな作品。

 昨年の夏の終わり、アクリルに書くという手法に出会い、影を写真に撮ると美しいことに気づいて、作品タイトルを『陰翳礼讃』にしようと思いつき・・・

 『陰翳礼讃』は、タイトルまで含めて、「収まるべきところに収まった」そんな感覚を持てる作品に仕上がりました。

 作品タイトルの『陰翳礼讃』は、谷崎潤一郎の随筆からもらっています。高校生のとき、模試の現代文課題に『陰翳礼讃』の一部が出題されていて、「これ、面白い」と思った記憶がずっと残っていたんです。随筆の内容は、日本の美は陰に宿る、西洋の美との在処の違い、というようなことが書かれていたと思います。

 『陰翳礼讃』という言葉は、インパクトがありますよね。意味も重苦しいし、画数も多い。なんだか古めかしい雰囲気がある。タイトルにつけたら、「目立つかもしれない」という目論見もありました。成功しましたかね?(笑)

 あんまり華のない中学高校時代でしたが、今思えば、限られた世界の中にあっても、いろいろなことを吸収していたと思います。スマホのない時代だからこそ、得られたものがあった。そして、あの頃積み重ねたものが、今の私を作っています。

時間は有限

一昨年の終わり、親知らず摘出の手術をしたんです。全身麻酔で5日間入院の、親知らずプラス顎の骨を削る手術。埋まっている親知らずの成分が嚢胞になって、顎の骨を溶かしていると言われて・・・摘出しないと顎の骨が溶けて無くなるから、摘出一択・・・

 ビクビクしていましたが、手術は無事に終了、そして退院。

 でも、削った顎部分とその周りの腫れは結構長く残って・・・その時に「時間は本当に有限なんだ」と実感しました。

 人生100年時代とは言うけれど、自分も家族も健康でいて、好きなことに打ち込める時間はどれくらいあるんだろうか、と。

 そんなタイミングで出会ったのが、AIの画像生成機能です。

 それまで「AIより人間が作ったものの方がいいに決まっている」「AI、うさんくさいなぁ」と思っていたのですが、認定講師仲間のBLOOMINのユウさんがAIで作られた画像を拝見して、認識をあっという間に改めました。

「AIがこんなに素敵な画像を作ってくれるんだ!使おう!」と素直に思えたんです。

 AIは、私の積み重ねてきたものを否定する存在ではなく、私が表現したいものへの最短ルートを示してくれる存在になり得る。今はそう思って、AIと向き合っています。

「Connecting the dots」

「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」

 今すぐに何かに役立てる経験もあれば、すぐには役に立たない経験もある。けれど、どこかで必ず、経験は生きる。

 これは、Apple創業者のスティーブ・ジョブズが、ある大学の卒業式のスピーチで語った一節です。とても有名なので、お聞きになったことがある方もいると思います。

 ジョブズは、大学でカリグラフィーのクラスを聴講したことがあり、その時の経験が、十年後、初代Macに美しいフォントを搭載するきっかけになった、という話です(とっても端折ってしまっているので、気になる方はYouTubeで!)

 レタグラフィーを始めてから、偶然この言葉に出会い、すごく胸に響きました。

 私自身のこれまでを振り返ってみて、小さい頃からの興味関心、手芸店での経験、レタグラフィー認定講師講座、AIの活用・・・めぐりめぐって、大好きで得意だった『書くこと』に戻ってきた。全てのdotが繋がっているんですよね。ひとつも無駄なことなんてなかったんです。

ポスターという新しい挑戦

レタグラフィー認定講師になって、デジレタ講座も受講して・・・でも、自分にしっくり合うレタグラフィーの生かし方が分からないまま一年二年・・・その間にAIがどんどん進化してきて・・・

いろいろ考えた結果、ポスターの製作販売を教えてくれる講座を受講して、自分でデザインしたポスターをCreemaで販売することにしました。

ポスターの講座を受講中、ふと思いついて、iPadで書いたレタグラフィー文字をポスターにパーツとして入れてみたんです。

 それを講座の先生に添削していただいたら、すごくほめてくださって!

「これでいいんだ!」と目の前がパァァァァ〜っと明るくなったことを覚えています。

 ポスター講座の先生曰く、デザインの中で、フォントはかなり重要な要素なんだそうです。でも、フォントは無限かと思えるほどたくさんあって、とても把握しきれない・・・選べない・・・(気絶)

 そんな中にあって、手書きの文字は完全にオリジナル。表現したい雰囲気に合わせて文字を書ける。「これってすごく楽しい!それに便利!」と、レタグラフィーの良さをあらためて感じる今日この頃です。

紅茶をテーマに、「季節を感じられるポスター」を届けたい

今、Creemaで販売しているポスターのテーマは「お茶の時間」広い意味で「私の時間」をテーマにしていて、そこに季節を掛け合わせています。

お花を飾るように、ポスターを飾って__

季節を感じるポスターを眺めながら、お茶を飲んで__

ほんの少し、自分のためだけの時間__

 私が季節のデザインにこだわるのは、時間に追われて生活する中で、小さな季節の移り変わりを見逃して、日々が過ぎ去ってしまっていた時期があったからなんです。

 公園の桜に蕾がついた、ほころび始めた。道端のつくしんぼが頭を出した。富士山の雪が溶けてきている。日の入りが遅くなった。

 イベントで季節を感じるよりも、日々の小さな変化で季節を感じることに喜びを感じたい。そういう変化をポスターに盛り込めたらいいなと思っています。

 だから、デザインは一つだけ作るのではなく、春夏秋冬、揃えて出せるように心がけています。同じ構図だけど、咲いている花が違ったり、温度感が変わっていたり。

 今年は「目で楽しむ四季折々のティータイムポスター」を一人でも多くの方に届けられるように、地道にコツコツ活動中です。私のポスターが、季節の変化に気づくきっかけになって、ふっと肩の力を抜ける時間に寄り添えたら・・・こんなに嬉しいことはありません。

KuromiさんのCreemaのサイトはこちら(画像をタップ)

静岡レタグラフィー教室 Kuromi先生

Thank you!